オリジナルの小説を書いてます。 【Offbeatscore】連載中です。

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伊武伊織こと、オリーブ先生がドアを開けて入ってきた。
「よぉ」
「あ、こんにちは」
「こんにちは、先生」
 先生は入って来るなり、都雅の机の上にあったカレンダーを見つつため息をついた。
「もうすぐ新学期だな、都雅」
「ええ、はい」
 四月に入るとあっという間に過ぎてしまう。もう新学期かぁ。
「都雅の学校って、いつから新学期?」
「来週の月曜だね。獅狩は?」
「私の学校は火曜日だって」
「そうなんだ…」
 いよいよ制服を着る時がやってきた! って感じ。
「そうだ、芹から預かってきたものがあるんだ」
 先生は徐にポケットから小さいぬいぐるみを取り出して私に見せた。
「何ですか? これ」
 受け取ると、何か紐が付いている。
「防犯ブザーだそうだ」
「……これが? かわいい」
 ぬいぐるみなのに、防犯ブザーとは。
 茶色のフワフワした犬で、たぶんトイプードルじゃないかと思う。
 まん丸の目が可愛い表情を作っていた。
「鞄に付けておきます」
「いや、制服のポケットの方が良いんじゃないかな」
 都雅は私のぬいぐるみを見ながら呟く。
「ええ? でもポケットがかさばっちゃう」
「鞄だと、離れている場合があるよね。だから。ポケットに入れること」
「うう……分かった」
「忘れずに入れておくんだよ」
「分かったってば」
 でも、ひと気がなかったら意味がないのでは? とちょっと思ったけど。
 まぁ。相手を怯ませるってことでは有用なのかも。
「説明書を読んでおくんだよ」
「もう、分かってるってば」
「明日、テストするよ?」
「ええ!? テストは学校だけにしてよ〜」
 私が叫ぶと、先生が大きな声で笑った。
「ブザーの鳴らし方と、止め方さえ分かっていれば大丈夫だろう。鳴らない事を祈るがな」
 そう。
 この時。
 私も、先生もブザーを鳴らす日が来るなんて思っていなかったと思う。
 二人ともある意味楽観主義なところがあるみたいだから。そういうところは似ているのかも。
 でも、都雅だけは物凄く心配をしていた。
 それは予想ではなく、確信だったのかもしれない。

53へつづく
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