「…………獅狩」
都雅は一度こちらを向いて、目を細めた。
「な、何? 都雅」
「乗れ!」
「………」
こ、こ、こ、こ、怖い〜っ。
いつもは丁寧な言葉を話す都雅が、命令口調だった!
「はっ、はいぃっ」
慌てて都雅の背中に飛び乗ると、勢い余って都雅が前のめりに倒れそうになった。
「わっ…ととと。危ない」
「ご、ごめんなさい」
私を背負いなおした都雅は、片手で携帯電話を取り出してどこかへとかける。
数回のコール音の後、聞きなれた声が聞こえた。
<もしもし?>
「あ、先生。俺です」
<ああ、都雅。どうした?>
「すみませんが、車で迎えに来てもらうことはできませんか?」
<……何かあったのか?>
「自転車を運んで欲しいんです」
<……わかった、芹に頼んでみる>
「お願いします」
携帯電話の終了ボタンを押すと、都雅は小さくため息をついた。
「あ、あの〜。先生がくるまで、辛いでしょ? 下ろしてくれる?」
都雅からの返事は無し。
ううう。
怖い。
結局、先生と芹さんたちが来るまでずっと、負ぶさったままだった。
58へつづく


