「聞きたい…かも」
私がそう言うと、柚……はニィ〜と笑う。
「交換条件といたしましょう。獅狩さんがこちらの制服を着てくださったら、お教えしますわ」
「ええ〜!?」
「簡単でしょう? これに袖を通せば、御話が聞けるのよ?」
ええ、そうですとも。
私は誘惑に負けました…。
柚からもう一つの制服を受け取って、急いで着替えた。
その制服は他の制服に比べて少し動きやすい感じ。
色は薄紫なんだけど襟が首を隠すタイプで、スカートがふんわりしている。
「これ、どこの制服?」
「入手が難しかったの。これは、某私立学校のブラスバンド専用制服よ」
「………………ブラスバンド専用?」
「そう。その学校には制服がなく、みんな私服で通っているのですが、ブラスバンドが大会に出る時に私服だとどうしてもバラバラでしょう? それで、制服があるのです」
分かったような分からないような話に、私は頷けないまま「はぁ…」と言ってしまった。
「それじゃ、話を聞かせてくれる?」
「ええ。もちろん。それでは、私の知っている事は御話いたします」
私が頷くと、柚は立ち話もなんだから…と言って椅子をすすめてくれた。
腰掛けた後、ようやく話し始める。
「八潮路さんに家庭教師がついたのは、何でも幼稚園の頃からだそうです。小等部を卒業する時までに何人も変えられたそうですけど。それで、中等部に上がった時にその女性が八潮路さんの家庭教師になりました。お名前は確か、笹峰 涼子さんとおっしゃったかしら」
「学校違うのに、良く知ってるのね」
「うふふ、情報の入手方法は秘密です。話を戻しますね。その笹峰さんが家庭教師になった頃、八潮路さんは中等部一年生の夏休み。あなたも良くご存知の伊武伊織さんからのご紹介だったそうですわ」
67へつづく


