「方々…なのね?」
「はい。それから」
「まだあるの?」
「最後はお兄様自身でしょうね」
芹さん自身?
私が目を瞬いていると、都雅は深く溜め息をついた。
「獅狩は、そういうところが鈍感だから困るよ」
「むぅ…」
「むぅ…じゃないでしょ。心配する方の身になってみてよ」
「え〜」
私が困っていると、芹さんがにっこりと笑う。
「大丈夫、今は何にもしないから安心してよ」
「お兄様。今はって本音が出てますわよ」
「あれ」
「あれ…ではありませんでしょう。まったくもう。…でも、仲間は一人でも多い方が宜しいでしょう。八潮路さん。お兄様からは私がガードいたしますので、一応は参加させた方がよろしいかと」
「……そうだね」
都雅が溜め息まじりにそう言うと、芹さんは苦笑して小さく肩を竦めた。
「やれやれ。一応…か。ま、いいさ。伊織にも言っとくよ」
「そういえば、伊武さんはどちらに?」
「下で桜子さんの御手伝いしてるよ」
「あら、そうでしたの…それでは私も御手伝いに参りませんと」
柚は椅子の背もたれにかけてあった白い布(エプロンだった)を取ると、部屋を出て行こうとする。
「桜子さんって誰?」
「え? あら、お兄様から聞いていませんでしたの? 私達の母ですわ」
「は・は……? え…お母さんを名前で呼んでるの?」
「桜子さんは、名前で呼ばないと返事をしないんだ」
「……真鶴さんと同じなんですか…」
都雅のお母さんである真鶴さんも、名前で呼ばないと怒るし。
73へつづく


